3/6講演会のご質問への回答です☆

今枝宗一郎 研修終了記念講演会質問
【医療】
◎今医療漫画にはまっています。「BLACKJACK」「医龍」「ブラックジャックによろしく」などは的を射ているのでしょうか?
→的を得ている部分もたぶんにあります。海堂尊氏の小説なんかも同様です。ただ、漫画や小説は、話を面白くするために、キャラ付けを明確にし過ぎます。実際は、人間性は多面性の生き物です。最近の漫画や小説は、共感を得るために主人公の心理描写は多面的にやりますが、権威者や悪役は、一面的に描かれていたりします。しかし、彼らには彼らの論理があります。本当に変えるためには、本質を理解するには、彼らがなぜ、そういう行動や考えに至ったかについても考えねばなりません。
◎今枝さんの視点から見た医療のビジョンは何ですか?
→「納得と安心の医療」と「満足の医療」、双方の達成です。
まず、「納得と安心の医療」ですが、医療は人が安心して暮らせる社会の基盤です。また、私がにほんの考える今後の日本のビジョンは「あなたを大切にする社会」ですから、大切にされている感覚を持つためには、医療のような人の命や健康という根本を守る分野が安心できなくてはお話になりません。また、東京大学名誉教授でシカゴ学派と正面をきって戦える数少ない世界的経済学者の宇沢弘文氏は、医療は、ガスや電気と同じで社会が安定して継続していくために必要なインフラストラクチャー、すなわち「社会的共通資本」であると述べています。
医療においての安心でもっとも重要なのは、困ったときに医療にかかれることです。そういう意味で救急やがんや心臓病、脳卒中など大病を患ったときに、しっかりと診てもらえる体制は必要です。また、介護や終末期でも安心して自宅や施設で療養生活が営めることは必要です。
ただし医療というのは、いつでも安心できるわけではありません。人に死は必ずおとずれます。しかし、それは通常、人には受け入れがたいものであり、どこまで医療技術が高まり、医療提供体制が整ってケアが手厚くなったとしても、安心できないものであるかもしれません。そのときに重要になるのは納得感です。そのためには、医療者と患者が十分話しあえる環境が必要であり、対話を促進するような専門家 (メディエイター)の存在も重要でしょう。また医療の優先順位や提供体制をどのようにしていくか、市民とも十分に対話して決めていかねばなりません。
ただ、私はこの社会的基盤であり、人々の安心感を司るものとしての医療が全てであるとは思っていません。命や健康に格差をつくるようなシステムでは絶対にいけませんが、更なる満足度を上げることで、それが社会を牽引する成長産業としての医療となることも期待できます。愛知の状況を考えたときにメディカルツーリズムなどは中でも有望だと考えています。
これらを実現するためには、医療分野への資金が十分に投入(対GDP比率12%程度)され、政策立案者、それを取り巻くメディア、市民など政策フィールドが十分に成熟」しており、「医療提供者や受け手である市民・患者の自らの健康や助け合いへの意識が高い」状態も必要です。
これらが並立する状態を理想的過ぎるとお感じかもしれませんが、私はビジョンとして考えています。
◎医師不足が問題となっており、今民主党のマニフェストでは医師数を1.5倍にするための政策がとられています。僕は定員増には問題ないのですが、医学部新設には20年から30年後の将来に医師不足になってしまわないか心配ですこの点に関して、今枝さんはどのようにお考えですか?
→新設医科大については、最近出てきた議論(水面下では前からありましたが)ですから、まずもっと議論が必要です。私としては、新設医科大は、限定的であれば良いと思っています。限定的というのは、現在の全国的に見た医師不足地域であればということです。例えば、埼玉・栃木・茨城・千葉房総・静岡中東部・宮城・福島です。実は東三河もかなりの医師不足地域です。これらの地域は、人口当たりの医師数がぶっちぎりで少ない地域です。当然ですが、医療の必要量=医師の必要数は、その地域の人口によります。病気の発症率は人口当たりどれだけというのはだいたい出ていますから。
大学のある場所によって、県の医師数はかなり影響を受けます。地域枠もありますし、大学はなんだかんだいっても母校ですから、その近くで働こうという人も一定数でてきます。そういうことを考えれば圧倒的医師不足地域ならば一部大学新設を認めてもいいのかなという考えは持っています。
◎医師不足に関して、愛知の4医科大学が連携して…とありましたが、具体的にはどのような策があるのでしょうか?各大学のしがらみや歴史、プライドなど障害は多いように思うのですが。。
→現在、4大学共同で衣料崩壊を防ぐための合議体制ができています。基本的にはこの延長線上で、互いに人事を助け合えるような関係性の構築が急務です。ただし、いくつか問題があります。もっとも大きいものは、県のリーダーシップがないことです。もちろん、医療を実質取り仕切るのは、医師自身であらねばなりません。しかし、これまでの歴史的経緯を超えてやるためには、知事やそれと同等の人のリーダーシップがあり、そのリーダーシップが、実質は医師に任せるということであれば動く可能性が十分あります。また、医師教育を連携して、教育内容や方法論を共有していくのも手です。これはキャリアパスの風通しの良さをつくります。人事はキャリアパスとも明確につながっていますし、教育面なら連携しやすいからこの手法は時間はかかりますが効果的です。
もちろん、ご指摘の通り、障害はたくさんあると思います。ただ、実は、これには先行事例があります。北海道です。北海道には③大学ありますが、歴史的にはかなり背景が異なるものの、今ではずいぶん人事面で融通しあっています。これは、北海道が医療崩壊先進地域で最早どうしようもない状況であったことが要因ですが、このままでは愛知もそうなる可能性があるので、北海道の連携をモデルにするというのも一つだと思います。
◎路上生活をしている人々など医療保険に加入できていない人の医療はどのようにしていけばいいと思いますか?
→まず、医療保険に加入していない人が、路上生活者以外に大勢いらっしゃいます。それは生活保護受給世帯です。彼らは医療券というものが発行されており、医療を受けられるようになっています。医療券の不適正利用であるとか、生活保護の半分は実はやくざ屋さんという問題はありながら、一応、これが日本の最後のSafety netとなっています。この基盤にのらないということは、日本の制度では、どうしようもないということです。なので、路上生活者=生活保護にせよというわけではありませんが、雇用や住居の問題も含めて、とにかく路上生活から生活復帰をしてもらうことが重要です。これは、医療の問題ではなく、福祉の問題として対応していきたいと思っています。
しかし、それでも路上生活となる人はずっと存在するでしょう。そのような人たちは、医療を受けられなくて良いかといえば、それは断じて違います。ただ、既存の病院が路上生活者たちの医療を丸抱えできるかというと、それも病院のOPERATION上難しいと思います。救急などは必要ですから、こういった路上生活者を受け入れている公的病院の特に救急の充実は不可欠ですが、それだけでは対応しきれません。
私はボランティアやNPOなどの新しい公共に大いに期待しています。私は昔、山谷という日本一の「どやがい」で路上生活者たち向けの診療所でボランティアをしていましたが、それは非営利組織やボランティアが支えていました。
こういう疑問をお持ちということは、笹島の診療所はご存知でしょうか?同様な方法論で活動していますよね。こういった組織の活性化が最も重要であると思います。
ただし、促進をするときに、こういったボランティアの動きや非営利組織に、寄付や資金流入が回らないことも大きな問題です。これには税制の問題が非常に大きいのですが、非営利組織の寄付への税制控除を拡大したいと考えています。
◎日本の医師の大変さは「欧米」と比べてではなく、「欧州」と比べてではないですか?(ツッコミ、Mムーアのシッコを見て)
→米国の医師の勤務環境についての質問かと思います。アメリカの医師の勤務環境は、シフト制がかなりの部分徹底されています。シフトの間はめちゃくちゃ忙しいですが、それ以外は病院を離れられます。ただし、医師1-2年目などの忙しさはすさまじいものがありますが。
◎どのような形で愛知県下4大学が産婦人科のチーム連携をし、どれくらい遂行しているのか?
→少し具体的な話になりますが、現在は、④大学で自発的・定期的に対話が進んでいる状態です。ただ、この自発的な場が必要です。現在、愛知県内で産婦人科がいなくなって、崩壊した病院はありませんが、もし、崩壊が起きた場合は、この場が必ず活きるはずです。
◎どうして日本の医療費と教育費はこれほどまでに軽視されるようになってしまったのか?
→理由は二つあると思います。一つは時代の問題ですが、高度経済成長は、特に一人ひとりを重視しなくても、工業製品の輸出と公共事業によってこの国の経済発展が支えられてきたからです。それを現在でもひきずっていると言えると思います。また、財政が危なくなってからは、とにかく削れるところから全て予算を削らないとやばいというのが、大蔵省というかつてこの国の中心であった組織の至上命題でした。それゆえ、予算を抑制しても比較的怒られなさそうな分野から削ったのです。医師も教師も他の分野に比べ比較的反対が少なかったのです。
もうひとつは、少しきなくさいですが、各業界団体と議員との結びつきの強さだと思います。非常に残念な話ですが、業界団体や各企業から政党や議員個人への献金が横行したこともありました。また、選挙活動時、投票時には業界団体や企業が自分の社員を、大量に派遣したり、票のとりまとめをしたりということが非常に多かったのです。医療と教育はそのあたりが他の業界に比べて弱かったということです。医療の日本医師会は非常に強い業界団体としてイメージされているかもしれませんが、緊縮財政が始まった1980-90年代にはずいぶん、力を落としていました。実は教育の中にひとつだけ日本が諸外国に比べて、お金を多くかけている部分があります。それは学校建設費です。これは養育の費用ではありますが、当然、建設業界が一枚かんでいます。それ故、非常に多くの税金が使われたりしました。そういうこともこの話を裏付けることかと思っています。
しかし、大切なのは、今までの経緯から脱却して、いかに増やすかですから、ぜひともそれを一緒に考えたいと思っています。
◎宗ちゃんの今後研修医を終えてどのようなビジョンを具体的に持っているか教えてください。
→このビジョンというのは、どういう意味でしょうか?今枝のキャリアパスという話でしょうか?4月から私は、医療現場の人間としては、内科医として主に在宅医療をやります。同時に、地域の患者さんを守るには、地域の力を借りねばなりませんから、地域を巻き込んだ新宿モデルをつくります。それとは同時に県単位・国単位で医療政策を中心に諸政策について提言したり、制度設計を考えて実行するつもりです。
◎医師の需給検討会では無理やり医師が足りているという結論を出したような印象を受けたのですが、ではなぜこの会が開かれたのですか?
→そうですね。無理やり出していたと思います。ただ、医療崩壊という問題が起きた以上、政府としても当然、なんらかの対策を講じなければ、メディアやネットがこれだけ発達した時代には批判に抗しきれるものではありません。アリバイ作りといってはちょっと恣意的すぎるかもしれませんが、審議会や検討会をつくって検討しましたというのがあれば文句は言いにくいですよね。だから、検討会はつくるわけです。これは、すべての省庁で行われています。
【経済】
◎これから10年で30%経済成長させる方法についてもっと伺いたいです。
→30%経済を成長させるわけではありません。私の試算では、毎年0.8%実質成長があれば、持続可能な社会と国民の生活水準が低下せずにすみ、財政も健全化の方向に舵はきれると言っています。これを達成するためには、「新規産業70兆円」「一人当たりの労働生産性38%増」「消費税は最低15%」です。30という数字はおそらく、一人当たりの労働生産性の話だと思いますが、これは、38%の上昇です。現状並みが継続する場合の一人当たりの労働生産性の成長は25%と推計されます。13%増を考えた政策が必要ということです。この政策は基本線としては、現状の技術力や商品力、販路を利用して、商品・サービスに付加価値を加えるという考えです。例えば、OL向け文房具ブランドのお話をしました。これまであった商品をより、セグメント化されたマーケットによりFitしたコンセプトを加えることで価値を生み出しました。そういう営みの連続の中で13%増を狙います。ただ、私自身は医療分野におりますので、他の分野の新たな商品価値やサービス価値を高める方法は良くわかりません。だから現場力が必要なのです。現場をお持ちの皆様の知恵を出し合い、新たなコンセプトや付加価値を生んでいくことが必要です。だからこそ、ビジョンを皆で共有し、行動することが重要なのです。
【教育】
◎今枝氏はこれから小中学生に語っていく場は作っていこうとはおもいませんか?(総合学習の時間などで)是非やってください!
→私自身が小中学生に語るということですか?昔、市民講師とか中学高校で髄分やりましたが、今後も機会があればお話させていただきたいと思っています。
【人生相談】
◎僕は工学部大学院1年で、工学よりもまわりに楽しいことがあることに気づいたので、思い切ってフリーターになっていろんな世界を知るのも面白いかなと思います。不安もありますがやってみる価値もあるかなと思っています。何かご意見いただけると嬉しいです。
→フリーターという職業が大事なのではなく、フリーターとなって何をやるかが大切です。世界を知るとは何ですか?なぜ、知りたいのですか?そういうことをどんどん深め、それが魅力的であり、自分の人生をかけてもいいと思えるのであれば、やるべきだと思います。
◎自分も能動的に動きたいし、いろんな人と出会いたいと思うけど、どのようにしてよいかがわかりません。どのようにすればよいですか?
→まずはこれまでの出会いを大切に、ちょっとだけ行動してみることです。例えば、あなたは今回講演会に参加してくれました、これも一歩です。ここで出会った人はSCANとかFOMIAとかいろいろな出会い、成長の場を持っています。もちろん、アイゼミもです、そういうところにちょっとずつ参加し始めるのが良いと思います。いきなりでっかいことをやっても結構つらかったりするので。
【その他】
◎必要な情報の収集方法について教えてほしい。
→難しい質問ですね。どのような情報がほしいかによって異なりますが、私は何か物事を調べるときに、出来るだけ原典(一次資料:メディアの報道ではなく、その元になる政府資料や研究論文など)にあたるようにしています。もちろん、時間がないや一気に全体像をつかみたい時は、まとまっているものを読みますが、それはあくまで慣れるまでと心に決めています。
◎本質的な問題にたどり着くにはどのようにすればよいか?
→これも出来るだけ原典(一次資料:メディアの報道ではなく、その元になる政府資料や研究論文など)にあたるようにすることだと思います。また、大切なのは、誰がいつ話したことなのかを気にすることです。全ての発言や考えや案には、それをつくった人がいます。その人がいくら論理的に言っていてもその人の価値観や立場が絶対に影響します。それゆえ、誰がいつ、その発言したのかに注意を配ると、本質にたどりつきやすい気がします。
◎日本人の多様な価値観をどのようにまとめていくか?具体的に。
→まず、日本は、諸外国に比べれば比較的価値観が似通っていると思います。
しかし、時代の成熟(物理的にある程度豊かになったこと)やネットの発達は価値観の多様化を昔よりは進めました。そのような中で価値観をひとつにまとめられるとは思っていません。むしろ、価値観をひとつにまとまらなくてはいけないというのは少し無理があると思います。
しかし、それでは、私たちは地域や国といった共同体の中で生きていかなくてはなりません。そこで私は出来る限り対話することが重要だと思っています。確かに価値観が異なれば、最後まで議論は平行線ということもあります、しかし、はじめからしっかいと誠実に対話をすれば、最後にはなんとなくの調整点が見出せたりします。そのためには、市町村への地方分権、市町村での市民協働が最重要だと思います。議会改革もあれば、地域のことは地域で自律できるような仕組みと、各地域の努力が必要です。ネット選挙の解禁は絶対に必要ですし、ネット議会も必要だと思います。河村名古屋市長がされている各地域ごとに地域委員会をつくろうという動きも非常に面白いと思っています。そういった動きを各地域地域で行うことが必要です。
◎愛知県の閉鎖的な気質をどうやって変えていくか?具体的に。
→まず、ひとつ疑問ですが、閉鎖的だとイケナイのでしょうか?確かに閉鎖的なところで損をしている部分も大いにあります。
しかし、閉鎖的だからこそ、東海地域は人が外に流出せず、済んでいるという点もあります。これは愛知の医療がなんとか崩壊せずに済んでいるのは、東海3県の医師が東海地方以外に出ないことによっていたりします。
ただし、損している部分で大きいのは、やはり人や情報の交流が少ないがゆえに、新たな発想がうまれにくく、新たな産業やビジネスチャンスがなかなか定着しにくいというところでしょう。それは、いつまでも工業ばかりに頼っていられない中で、産業・ビジネス愛知の成長戦略に影を落とします。この部分は変えなくてはなりません。実際に、愛知県は大学発ベンチャーの数が全国10位で全国平均並みと奮いません。こういった分野に関しては閉鎖的でない方が良いと考えています。
しかし、いきなり気質を変えようと思っても無理です。世の中でもっとも変わらないものは、人の考えです。
これはマニフェストで有名な北川まさやす元三重県知事の言葉ですが、「人の考えを変えるには、人の行動を変える。人の行動を変えるにはシステムを変える」というものです。彼はこの思想で三重県庁の行政改革をすすめ、カラ出張をなくし、非常に意識の高い県庁職員を育てました。
この考えは非常に的を得ていると思います。まずは、ベンチャーや新産業といった分野をいかに活性化していくかが鍵です。特に大学発ベンチャーなどは、産官学連携のコーディネーターの存在が非常に重要であり、その量も質も向上が必須です。
また、愛知は日本の中での交流としてはなかなか難しいところがありますが、外国人となら他の県と変わらないような閉鎖性であると思います。愛知の人口当たりの留学整数は、全国平均程度で、これも愛知としてはあまり奮いません。また、これは愛知だけではない日本の課題でもありますが、もっとも多くの情報が飛び交い、人間の知識のぶつかりあいである、新たな技術や開発研究者の外国人の比率が非常に低いのです。外国人研究者の積極的な受け入れが必要です。