【資料】 【接触機会5割で国民の命も、暮らしも守る出口戦略(医療崩壊をさせずに社会経済活動を再開する戦略)】提言書原文およびメッセージについて

リンク先から来られた方はそれぞれの資料をご覧くださいませ。

【資料】

接触機会5割出口戦略 命も暮らしも守る提言本文

接触機会5割出口戦略 命も暮らしも守る提言本文pdf版

出口戦略パワーポイント説明資料

出口戦略パワーポイント説明資料pdf版

【動画】

■5割接触機会で命も暮らしも守る新出口戦略

https://youtu.be/PdHysEqYy-M

■緊急事態後の暮らしとは?外出自粛でなく5割接触機会へ

https://youtu.be/7Rku1J_0lWs

■学生が緊急事態宣言後の暮らしで気になっていることに答えました!

■ハイリスクの方が心配な事に答えました!

https://youtu.be/P9ejGbcjg40

 

以下本文も掲載します。

 

接触機会5割で「命」も「暮らし」も守る新出口戦略(案)

 

2020年5月22日改訂

自民党 新型コロナウイルス対策医療系議員団本部

幹事長 衆議院議員 今枝宗一郎

【はじめに】

新型コロナウイルスは 5月18日現在、全世界で約472万人以上の感染が確認され、32万人が死亡している深刻な感染症である[1]。世界各国で都市封鎖や渡航制限などの政策が取られた結果、流行前と比較し、日経平均株価は14.7%、ダウ平均株価は18.5%下落するなど、経済的にも大きな打撃を与えている[2]。日本においても、感染者数の増加に伴い4月7日に緊急事態宣言が発令され、5月4日に延長が決定されたため、不要不急の外出や店舗や施設の使用制限が要請され、全国的に大きな影響を与えている。

このような状況を打開すべく、新型コロナウイルス対策において、接触機会5割で国民の命も、暮らしも守る出口戦略(医療崩壊させずに経済社会活動を再開する戦略)の作成に取り組んできた。以下にその内容を概説する。

 

1. 要旨

新型コロナウイルス対策の戦略を下記の通り短期の出口戦略・中期の戦略・再宣言基準・長期の出口戦略に分類する。

 

短期:緊急事態宣言の解除基準

中期:緊急事態宣言解除後、社会を動かしつつ緊急事態再宣言を可能な限り回避する基準

再宣言:緊急事態宣言を再度宣言する基準

長期:新型コロナウイルス感染症が終息し、完全に自由な社会活動を再開するための基準

 

 

戦略

短期

直近7日間の新規感染報告者数が、その前の7日間のものより少ない。

 

直近7日間の新規感染報告者数が、人口10万人あたり0.5人を下回る。

 

新型コロナウイルス対応病床利用率が6(p)割を下回る。

※地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら数値目標を調整する。

 

集中治療室病床利用率が4(p)割を下回る。

※地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら数値目標を調整する。

中期

接触機会5割:平時と比べて、約5割の接触機会とすることを目標として、私たち私たち一人ひとりが新しい生活様式を実践する。政府はその為に方針の明確化とともに、諸施策を推進する。

※外出自粛は0でも、接触機会が5割なら良いという事です。

・テレワーク等を中心とした新しい勤務形態を採用することで、外出機会を無理のない範囲で削減する。

・外出機会の削減だけでは接触機会5割削減達成は不可能であり、外出時の接触率も約5割削減する。

 

・飛沫感染を予防するため、会話時も含めてマスクの着用を徹底する。換気を行う。

・接触感染を予防するため、公共のものに触れた後の手洗いを徹底する。
特に、目・口・鼻を触らないように注意する。

・なるべく2mの身体的距離を確保するよう努力するが、身体的距離の確保が難しい場合は、マスクの着用、手洗いの徹底により感染リスクを削減する。

 

・業種毎に策定しているガイドラインを、社会経済活動を維持しながら接触率を5割削減するものとしてアップデートする。

 

感染者数・推定R値・外出状況等について常時発表を行う。

 

地域ごとに段階的な社会経済活動の再開基準を策定する。

 

医療提供体制を充実し、ITツールを活用した感染拡大防止策を導入する。

 

PCR検査等は、医師・保健所の判断で必要な検査は全て迅速に行えるように推進する。同時に抗原検査を有効に活用する。

 

定期的に抗体検査を用いた大規模疫学調査を実施する。

 

企業・個人に対して十分な経済支援を行う。自殺対策を徹底する。

再宣言

新規感染者数が、10万人あたり5(p)人を超過する。

※地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら数値目標を調整する。

 

新型コロナウイルス対応病床利用率が8(p)割を上回る。

※地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら数値目標を調整する。

 

その他医療現場から医療崩壊の危機であることが示される。

 

※上記のうちいずれか1つを満たしたときに再宣言するものとする。

長期

有効性の証明されたワクチンが開発され、接種が完了する。

 

疫学調査の結果、6割以上が抗体を保有していることが確認される。

 

なお、医療の提供体制に関しては、指標設定の根拠として現在の医療提供体制の課題について巻末(別添:提言1 新型コロナウイルス感染症対策に向けた医療提供体制整備)にまとめてあり、そちらを参照されたい。

 

2. 短期的な出口戦略

 

2-1. 直近7日間の新規感染報告者数が、その前の7日間のより少ない

感染症疫学において、流行増減の記述のために「1人の感染者が何人の新規感染者を生み出しているか」を表す「実効再生産数:R(t)」を把握することは重要である。しかし、再生産方程式に基づくより精緻なR(t)の推定には、感染報告者数だけでなくその診断日及び発症日に関するデータが必要であり、リアルタイムに推定することが困難である。このため、感染動態の指標として(直近7日間の感染者数)/(その前の7日間の感染者数)を用い、これが1を下回る時に新規感染が収束傾向にある蓋然性が高いと判断する。ただし、発症から感染確定の報告までに約2週間のタイムラグがあるため、これらの指標は報告時点での増減を必ずしも意味しない。このため、以下の指標と併せて流行の増減を評価する。

 

2-2. 直近7日間の新規感染報告者数が人口10万人あたり0.5人を下回る

緊急事態宣言の最大の目的は、感染を抑え込み、医療崩壊を防ぐことである。医療需要が供給を下回るためには、流行の増減だけでなく、絶対数の評価が必要である。このため、各都道府県において1日あたりの感染者数が10万人あたり0.5人を下回る(目安としては日本全体で約630人)ことを解除の目安とする。

 

2-3. 新型コロナウイルス対応病床利用率が6割(p)を下回る

医療崩壊を回避できている1つの指標として、新型コロナウイルス対応病床利用率が挙げられる。これが6割を下回ることを解除の目安とする。ただし、地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら数値目標を調整する。

 

2-4. 集中治療室病床利用率が4割(p)を下回る

新型コロナウイルス対応病床の利用率と同様に、最重症患者に対する医療が十分供給できていることの指標として、集中治療室病床利用率を用いる。これが4割を下回ることを解除の目安とする。ただし、地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場

 

3. 中期的な戦略(緊急事態宣言解除後の生活様式の提言)

【総論】

中期的な戦略は、新型コロナウイルスへの予防・対策を常に実施しながら(共存)も、社会経済を滞りなく継続させることにある。

スペインで 7万人を対象に行われた研究では、新型コロナウイルスの抗体を有する割合は全人口の5%程度であることが報告され、PCR検査によって確定された患者数の約9倍の感染者がいることが明らかになった[3]。我が国の調査においても、数十倍から数百倍の感染者がいることが予想されており、無症候性感染者が現在顕在化している人数より多く存在することは確実である[4,5]。つまり死亡率は数十分の一~数百分の一に低下する。このため、新型コロナウイルスの致命率は季節性インフルエンザよりやや高いか、あるいは同程度であることが示唆され、新型コロナウイルスとの共存という戦略には一定の合理性がある。

一方で、諸外国の感染状況や、4月半ばから後半にかけての東京都の状況から、感染者数が急激に増加することで医療崩壊のリスクをきたすことも事実である。このことから、爆発的な感染の増加を抑え込みつつ、できる限り社会経済活動を再開するための戦略を推進することが求められる。

なお、米国において人種毎の10万人あたりの死者数はアジア人18.4人、黒人42.8人、ヒスパニック19.1人、白人16.6人と報告されており、アジア人だけ突出して低値なわけではない[6]。また、イスラエルでの研究では、BCG を接種した群と接種していない群で新型コロナウイルスに感染した率に差がないことが示されている[7]。現時点では「日本では人種差やBCG 接種により新型コロナウイルス感染が拡大しない」という楽観的な見通しを支持する根拠はなく、適切な感染予防を行いながら社会経済活動を再開することが重要である。

 

【各論】

3-1.「接触機会5割」を目指し、新しい生活様式を実践できるよう明確に方針を打ち出す。

緊急事態宣言解除後の最大の懸念は、国民の生活様式が完全に従来のものに戻り、再度感染が拡大することである。一方で、強い自粛の要請を続けることにより、経済の悪化が進むことも避けねばならない。この為、個人個人が流行の拡大を防ぎ、かつ社会経済活動は再開する、新しい生活様式を身に付ける事が重要である。「接触機会の5割削減」を提言する。

緊急事態宣言解除後に重要なのは下記の2点である。

1. 実効再生産数 (R(t)) が継続して1を上回らないようにする
2. R(t) < 1 の条件を満たしながら、最も効率よく経済を活性化する
令和2年3月以降の日本の実行再生産数の推定値の推移をみると、最も高値であったのは 3月15-25日頃であり、R(t) = 2.0 程度であることがわかる[6]。

このことから3月中旬と比較して「接触機会の5割削減」を目標として設定し、R(t) = 2.0×0.5 =1を実現する*。この数値は、一人ひとりが日常生活を営む上で基準となる生活様式の目安とする。

 

テレワーク等を中心とした新しい勤務形態・体制は外出機会を効率よく減らすことに一定の効果がある。民間企業のアンケート調査では、3月9-15日から4月10-12日にかけて、テレワークを実施した企業は13.2%から27.9%に増加したことが報告されている[7]。しかし、外出制限のみで5割の接触機会の削減を達成するのは現実的に不可能であり、社会経済活動に与える影響が大きい。また高齢者や子どもの健康や安全、家庭内暴力等の問題、メンタルヘルス上も重大なリスクを生じる。

 

そこで、外出機会の制限は無理のない範囲とし、外出機会あたりの接触率を約5割削減することで総合的に目標を達成する。これは物理的に人と接触する回数を5割削減することを意味するのではなく、マスクの着用、手洗いの徹底や換気などにより、感染が成立するリスクのある行動を5割削減することを意味する。

 

専門家会議で提言されている「2m の身体的距離の確保」「マスク」「手洗い」等の基準を全員が完璧に遂行すれば、エアロゾル感染などの特殊な感染経路を除き、感染の伝播をほぼ100%抑えることができると考えられる。我々はより効率的に感染予防を行い、同時に社会経済活動をできる限り回復させるために、以下の基準を提案する。

 

・接触感染を予防するため、何かに触れた後の手洗いを徹底する。
・特に、目・口・鼻・耳を触らないように注意する。

・飛沫感染を予防するため、会話時も含めてマスクの着用を徹底する。換気を行う。

 

・身体的距離を確保し、いわゆる「3密」をできる限り回避する。ただし、通勤電車の中などどうしても身体的距離の確保が難しい場面では特に、マスクの着用を徹底する。ただ、身体的距離確保が難しい場所は飛沫感染しうる場であると考え、スマートフォンなどのデバイス(スマホ)をいじらないなどの工夫(スマホに飛沫が付かないようにする為。)他人と接触した後は顔面の粘膜面などを触る前に十分な手洗いを徹底することで、感染のリスクを抑え、「社会経済活動を再開しながら、接触の機会をトータルで5割削減する」ことを個々人が達成することが何よりも重要である。

 

また、各種事業の代表者は、この数値目標を念頭に感染症の専門家と協議し、有効性が高く現実的なガイドラインを策定する。接触機会を完全に0にすることは不可能だが、各業種毎に5割の削減が達成しつつ社会経済活動を維持する仕組みを考案する事が求められる。

(理論的背景として、*, 時刻 t における新規感染者数は接触率、感受性人口および 時間前に発生した感染者が新たに感染させる数を周辺化したもの積によって定まるため、との積を5割削減することが肝要である)

 

・ハイリスク者の保護

新型コロナウイルス感染症は、50歳未満の致命率が 1%未満である一方、80歳以上の高齢者の致命率は 13.0 – 20.2%に達すると報告されており、年齢や基礎疾患などのリスク

によって致命率が大きく異なる[8]。このため、国民の命を守るためにハイリスク者を保護する政策は極めて重要である。具体的には、65歳以上、介護福祉施設入居者、慢性閉塞性肺疾患や心不全、免疫不全、重度の肥満、糖尿病、透析患者、肝疾患を有する者をハイリスク者と定義する。

 

ハイリスク者への感染を防ぐことは、重症化する患者数を抑えることにつながり、結果的に医療崩壊のリスクを下げることができる。感染者が一時的に増加したとしても、ハイリスク者への感染を抑えることで、緊急事態の再宣言を回避できることが期待される。このためには、ハイリスク者が感染を回避しながら必要な社会経済活動を行うための工夫および、非ハイリスク者からハイリスク者への感染を防ぐ工夫が必要となる。高齢者および基礎疾患を有する患者に対する具体的な対応策を下記に記す。なお、詳細については別途資料も参照されたい(別添資料2)。

 

1. マスクの着用や手洗いなどの標準的な感染予防策を徹底する。
2. 外出に際して2mの身体的距離の確保を徹底する。距離の確保が困難な公共交通機関の利用はなるべく回避し、タクシーなどを利用する。この費用は公的に支援する。
3. ハイリスク者と同居する者は、会話や食事中なども可能な限り身体的距離を確保するように努め、また生活用品(食器やタオルなど)を区別するなどの工夫をすることで、ハイリスク者への感染を予防する。
4. 施設で生活するハイリスク者を非ハイリスク者が訪問する際には、徹底した感染予防を行う。
5. 家族や介護者が電話、テレビ電話などの通信機器の確立・利用することを推奨し、初期設定支援を行う。身体的距離を確保しても社会的距離が離れることのないよう留意にする。

 

・新しい生活様式の業種別ガイドラインの策定

新しい生活様式の中で接触機会の5割削減を実現するには、個人の行動だけでなく、それぞれの業種おいてガイドラインに従った対応が必要となる。既に策定された業種別ガイドラインについては、実際に接触機会の5割削減のために妥当な指針となっているかを良く確認する必要がある。また、感染者数および推定 R(t) のフィードバックを行うことで適宜基準の調整を行う。

これらの基準を実践するために店舗や企業が「新たな投資」を必要とする場合は、国の責任において「持続化補助金」「ものづくりサービス補助金」等を拡大し、店舗や企業の負担を軽減させることが肝要である。接触機会を削減するガイドラインを策定することが不可能、あるいは策定しても大幅な業態の縮小・減収等が明らかである業種には、減収補償的な経済支援を行うべきである。

 

・勤務体制の見直し

職場における接触機会を減少させるため、在宅勤務を中心としたテレワークは重要である。在宅勤務に代替可能な場合はできる限りテレワークを継続することを推奨するとともに、政府による助成の拡充・期間延長も含めた支援を行っていく必要がある。

また、時差通勤の継続、対面での打ち合わせは避けてオンラインでの会議を実施する等、緊急自粛宣言下で行われた取り組みについては、可能な限り継続することが望ましい。在宅勤務や時差通勤など柔軟な働き方は、新型コロナ対策のみならず、子育てや介護・通院治療等を行いがらの就労継続の観点からも非常に重要である。新型コロナウイルス対策のためだけではなく、一人一人が働きやすい環境の整備が進むことが望ましい。

 

・学校の再開

新型コロナウイルス感染症は、小児の死亡率は極めて低いことが知られているが、感染は成立することが明らかにされている。このため、学校に学童が集まることで飛沫・接触感染が拡大し、各家庭内で更に感染を拡げることが懸念される。一方で、児童生徒の学習の機会を確保するだけでなく、親の社会参画を促進し、児童虐待のリスクを抑えるためにも、学校を再開することは極めて重要である。各地域での流行状況に応じて、十分な感染対策を行った上で適宜学校を再開していくことが必要である。また、毎年冬にはインフルエンザの流行で学級・学校閉鎖が例年のように行われているが、今回の新型コロナウイルス流行を契機にオンラインで授業が実施できる体制に関しても整備されることが望ましい。

さらに、オンライン学習を含めた自宅学習の機会が増えることで、教育格差の拡大が懸念される。どのような状況にある子供でも等しく学びの機会が得られるよう、最大限の配慮を行う。

 

・渡航制限

経済活動の再開において、ビジネス目的の渡航を再開することは重要である。一方で、他国から感染者が流入することで、日本国内での流行の再燃も懸念される。その再燃により国内での感染予防の努力を水泡に帰す可能性もある。したがって、感染が流行している国、地域に対しては、経済性ではなく感染拡大防止の観点を重視する観点からの対応が必要であり、渡航制限は継続する。

 

3-2. 感染者数・推定R値・外出状況等について常時発表を行う(フィードバック)
現在の感受性人口、R(t) 推移、接触率や外出割合の変化等を継続的に公表することにより、現状把握と目標の達成状況を可視化し、国民にわかりやすく示すことが求められる。これらの情報開示により国民の行動に対するフィードバックをすることで、国民一人ひとりが R(t) < 1を保ちながら、効率よく社会経済活動を維持する方法を見出すことを助け、本指針を含む戦略の改訂・更新にも資することになると考えられる。

R(t) や接触機会など、元となる情報は専門家会議・諮問委員会が発表することを要請する。新しい生活様式の元で、どの程度接触機会が削減されているかを公表し、その後の生活様式の再考の参考とする。

 

3-3. 地域ごとに段階的な社会経済活動の再開基準を策定する
新型コロナウイルス感染者数は地域差が大きく、また医療提供体制も大きく異なることから、全国一律の自粛要請は経済効率が悪いことは明らかである。したがって、地域ごとに段階的な社会経済活動の再開基準を策定することが望ましい。各都道府県において以下の指標を参考に社会経済活動の再開基準を策定し、またこれらの指標を常時表示することで市民にフィードバックを行うことが必要である。

 

指標

Phase3

緊急事態再宣言

Phase2
感染拡大傾向

Phase1
感染がほぼ抑制された状態

Phase0

感染が抑制された状態

感染状況

新規感染者数

5人/10万人以上

 

 

追跡不能な感染者が0の状態

 

直近7日感染者数/その前の7日の感染者数

 

>1

≦1

 

 

R(t)

 

>1

≦ 1

 

医療提供体制

対応病床利用率

>8p割

6p – 8p割

6p割以下

 

 

集中治療室病床使用率

 

>4p割

4p割以下

 

 

都道府県は公式メディア等を通じて毎日上記の指標を発表し、報道機関が利用しやすい形で提示する(例:天気予報や花粉情報など)ことが求められる。

特に、飲食店など業務形態上人と人との接触が避けられないような業種では、上記のPhase に基づいた細やかな業種別ガイドラインを策定することが望ましい。都道府県ないし市町村単位で運用を変更することで、効率的に社会経済活動を再開していくことが求められる。ただし、Phaseの危機度が高い地域から低い地域へ移動する人の場合は、自ら主体的にPhaseの高い地域と同様の行動をするなどの配慮が必要である。

 

3-4. 医療提供体制を充実し、ITツールを活用した感染拡大防止策を導入する
日本国内で感染が拡大してから、新型コロナウイルス対応病床の不足、集中治療室の占有、個人防護具などの医療資材の不足、新型コロナウイルスに対応する医療従事者の不足と疲弊など、医療提供体制の不足が指摘されてきた。中期の戦略として、医療提供体制を拡張することは極めて重要である。具体的な解決策を以下に列挙する。各項目の詳細については別途資料を提示する(別添資料2)。

 

1. 新型コロナウイルス感染症軽症者用の療養施設を確保する
2. 新型コロナウイルス対応できる集中治療病床と人材確保の計画をたてる(地域ごとの実情に合わせ、新型コロナウイルス患者を集約化あるいは役割分担することで病床と人材を確保する)
3. 感染防護や診断・治療に必要な医療資材を確保する
4. ITを活用し、効率よく患者や医療提供体制のデータ収集とモニタリングができるようにする
5. 感染拡大期においても必須保健サービスを提供できる体制を確保する

 

また、新型コロナウイルス感染症に対応する人材の確保および離職防止にあたっては、医療従事者の安全の確保、危険手当など報酬の確保、子どもの保育や医療従事者の滞在先支援など働ける環境の保障、メンタルヘルスのサポートなどが必須である。院内感染を防ぐことは医療提供体制を継続的に確保するために極めて重要であり、新型コロナウイルス対応専門病院以外でも、院内感染対策を進めるためのコンサルタントの設置など支援体制を整備する。新型コロナウイルス感染症にあたっている病院や、救急対応する地域の基幹病院を優先的医資金援助を行うと同時に、一般診療の減少により経営難に陥っている病院に対しても経済的な支援を行う。

また、IT を活用した病床確保状態のモニタリングや診療提供の効率化も加速させるべきである。地域の新型コロナウイルス感染者用に確保された集中治療病床、人工呼吸器台数およびそれらの占有率、PPEの普及率、人材確保の程度は、データが集約、公開されモニタリングできるようにすることが必要である。また、ITを用いで患者のモニタリングをするなど、なるべく患者と医療関係者が接触しないようにすることで医療従事者の負担軽減や院内感染防止にもつながる。また、現在、日本各地で導入を進めているITを用いた様々な感染拡大防止策も全国展開すべきである。IT を用いて濃厚接触の疑いがある人に通知を送ったり、クラスター対策に有効活用することで、迅速に濃厚接触者を把握し、クラスターの連鎖を防ぐことが期待される。

これらに加えて、保育所における医療従事者の子どもの預かり拒否や、タクシーの乗車拒否などの医療者差別ともいえる事例が顕在化している。新型コロナウイルス感染症の対策や治療にあたる医療従事者に対する差別や偏見は断じて許されるものではなく、医療従事者の離職にもつながりかねない。こういった事例が発生しないためにも正確な情報をわかりやすく国民に伝える必要がある。また被害にあった当事者にはメンタル面を含めたサポートを行うとともに、さらなる被害を発生させないためにも情報を収集して公表するなど速やかに対応すべきである。

 

3-5. 検査体制を拡充する

PCR検査・抗原検査は、臨床診断及び濃厚接触者の感染状況把握の目的など、医師や保健所が必要と判断したものは全例検査可能とする体制を整える。抗原検査と併せて検査体制を構築することで、検査時間の短縮と、PCR検査のキャパシティへの負担軽減を図る。

 

世界各国の、確定症例数あたりの検査数を以下に示す[9]。

上図の通り、日本は感染者当たりの検査数は諸外国と比較して過少な値ではなく、検査が少ないため感染の実態を把握できていないという主張の根拠は乏しい。5月17日現在1日あたり施行可能なPCR検査数は 2万2千件 であり、実際の検査件数は1万件以下で推移している。緊急事態宣言の解除基準である10万人あたり0.5人の感染者(日本全国で600人/日)を捕捉するためには、1日あたり2万件の検査体制であれば 34.8件/人となり、治療・濃厚接触者追跡目的の検査数としては世界各国の中でも中位グループとなることが予想される。

ただし、医師が PCR 検査を依頼しても検査不能であったり、依頼をしてから結果報告を得るまでに時間がかかることなどの問題が指摘されてきたことは事実である。このため、現状の検査数で臨床上必要な検査が迅速に行われていることを調査することを提言する。これに加えて唾液を用いたPCR検査など、更に簡便で再現性の高い検査が施行可能な試薬が整備されつつある。試薬の増産と備蓄管理も重要である。必要また、今後感染が再度拡大した場合においても十分な検査体制を実現するために、PCR検査体制の確保に加え、抗原検査を効果的に組み合わせることが重要である。

 

抗原検査については PCR検査に比較して感度は低いものの、特異度は遜色がないことが示されており、臨床現場ですぐに診断可能であるという特性を持つ。医師の判断に基づきこれらの検査キットを運用することで、新型コロナウイルス感染者の疑いが濃い症例については受診施設内で速やかに診断を可能にし、必要に応じてPCR検査を組み合わせることで偽陰性のリスクも低減する体制を構築する。

 

PCR 検査体制については、クオリティーコントロール(QC)を実施しつつ、都道府県衛生研究所、民間検査所、病院検査部門に加え、大学の基礎研究室や研究機関においても検査を実施できるように、人員の教育訓練・装置の設置と整備・試薬の確保を行う。検体の分配についても垣根を超えた対処が可能なようにルートを整備する。

いくつかの抗体検査を用いた疫学調査において、本感染症は無症候性感染者が PCR によって確定診断された感染者の数十~数百倍程度存在することが報告されている[3-5]。これらの無症候性感染者からの感染の拡大を防ぐため、より感度の優れた検査の開発を促進することが望まれる。

 

3-6. 定期的に抗体検査を用いた大規模疫学調査を実施する

これまでの研究において、新型コロナウイルス感染症では多くの症例で中和抗体が産生されることが確認されていること、再感染は極めて稀であることなどから、中和抗体を有する既感染者は再感染のリスクが低いことが予想される。このため、定期的に大規模な疫学調査を行い、地域内の既感染率を推定するとともに、中和抗体を確実に測定できるようになれば、既感染者の経済活動の再開を許可することは合理的である。

ただし、新型コロナウイルス感染症は発生から半年程度しか経過しておらず、中和抗体が長期間持続するかどうかは、今後の研究結果を待って判断する必要がある。したがって、疫学調査で既感染が確認された者が、再感染を起こすか否かの経過を追う必要がある。これに加えて、既感染者・未感染者を区別することで、差別や偏見につながらないようにする必要がある。

 

3-7. 企業・個人に対して十分な経済支援を行い、自殺対策を徹底する。
経済的要因による自殺の増加には明確なエビデンスがあり、過去のビッグデータから得られた自殺率予測モデルによると、失業率が1%上がると、自殺率が 1.26 倍になるとされる[11]。 ニッセイ基礎研究所の予測によると、新型コロナウイルスに伴い失業率が 3.9% まで上昇するとされる[12]。この失業率を当てはめて計算すると、日本の自殺率は10万人あたり22.4、自殺者数は 28,724人まで上昇する危険がある(2019年比 8,555人増)。
これを防ぐために、企業を倒産させないための減収補償的な経済支援を徹底する。また、個人の暮らしを守るための給付金、減税、公共料金減免、失業者に対する補償や、リモート雇用などを取り入れた新しいビジネスモデルの推進といった総合的な経済対策を行う。
また、希死念慮を呈する人に対しては遠隔診療などを用いた早期の自殺リスク評価と精神科的加療を行う。

 

4. 緊急事態再宣言の基準

 

緊急事態再宣言の基準を決める上で最も重要な要素は、「医療崩壊が危惧されること」である。各都道府県および地域によって医療提供体制の格差が大きいため、一律の基準を設けることは困難である。そこで、下記に暫定的な基準を提示し、これらのうちいずれか1つを満たした場合に緊急事態の再宣言を考慮するものとする。

 

4-1. 新規感染者数が、10万人あたり5(p)人を超過する

これまでに最も多い感染者が報告されている東京都内において、医療資源が最も不足したのは4月下旬であることが報告されている(別添資料1)。すなわち、この2週間前の4月10-15日頃に1日あたり 400-500 人程度(東京都人口10万人あたり約5人)発症していた患者が医療を逼迫していたことが推測される。このことから、新規感染者数が10万人あたり5人を超過した場合に緊急事態の再宣言を考慮するものとする。なお、上述の通り地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら数値目標を調整する。

 

4-2. 新型コロナウイルス対応病床利用率が8(p)割を上回る

緊急事態宣言から患者数が減少するまでには時間のずれが生じるため、宣言後しばらくは患者数が増加することが予想される。このため、新型コロナウイルス対応病床利用率が8割を上回った時点で緊急事態の再宣言を考慮するものとする。なお、上述の通り地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら数値目標を調整する。

 

4-3. その他医療現場から医療崩壊の危機であることが示される

新規感染者数、新型コロナウイルス対応病床利用率以外の指標についても、医療崩壊のリスクがあると判断された場合は緊急事態を再宣言する。具体的には、集中治療室の不足、個人防護具の不足など、医療の提供継続が困難となる予兆が現れた際には、再宣言を考慮する。これらの指標は特に地域格差が大きいため、具体的な数値目標は提示せず、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら再宣言の基準を設定するものとする。

 

5. 長期的な出口戦略

 

5-1. 有効性の証明されたワクチンが開発され、接種が完了する

新型コロナウイルス対策を終了し、従来と同様の経済活動を再開するための目安の1つとして、ワクチンによる集団免疫の獲得が想定される。米モデルナ社で開発中のワクチンやアストラゼネカ社で開発中のワクチンなど、第1相試験が既に開始されているワクチンもあり、有効性が証明された場合は速やかに PMDA において承認審査を行う必要、ワクチン供給を速やかに実施できるようにワクチンを確保する必要がある。また、国内のワクチン開発も継続して行うことが重要である。

 

5-2. 疫学調査の結果、人口の6(p)割以上が抗体を保有していることが確認される

ワクチン以外に新型コロナウイルス対策を終了できる可能性は、集団免疫が獲得されることである。5月13日現在、新型コロナウイルスの基本再生産数は 2.2 – 2.6 と推定されており、集団の約6割が免疫を獲得することで、対策なしに感染は収束に向かうことが期待される[13-15]。また、基本再生産数の推定値が同様であっても、感受性の異質性が大きい場合には6割より低い値で集団免疫が獲得されるという報告もある[16]。ただし、前述の通り再感染の有無や中和抗体の持続期間は十分明らかになっておらず、今後の研究結果に応じて数値の調整は必要である。

 

6.付言:超長期的(新型コロナウイルス終息後)の出口戦略

 

6-1. 新型コロナウイルス終息後に、感染症に強い国を創る為に、行うべきこと

新型コロナウイルス対策が終息しても、今後、別の感染流行の可能性がある。その為に、感染症対策として日本版 CDC の創設と保健医療体制強化、感染症に強い医療体制(人材・病床・資機材等)構築、AI・IT を活用した保健所体制や医療体制の充実を行うべきである。

 

6-2. 過密を避ける分散型の日本創り

そもそも東京一極集中など都市の過密そのものがリスクであることが明らかになり、首都機能分散、地方創生も徹底的に進める必要がある。職住近接とサテライトオフィス振興やオンライン学習推進、VRによるエンタメの充実も進めるべき。また、際限のないグローバル化もリスクである。企業の国内立地を進め、内需主導型経済を目指す。農林水産業支援で食料自給率を高めるべきである。

 

6-3. 検証と反省
上記二項目達成のためにも、流行が収束した際には、今回の新形コロナウイルス流行をふりかえり、広く英知をあつめて検証と反省をおこない、超長期的な戦略についての提言についても国だけでなく民間も含め幅広く行われるべきである。

 

 

 

 

 

【出典】

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2. Lora Jones, Daniele Palumbo, David Brown. Coronavirus: A visual guide to the economic impact. https://www.bbc.com/news/business-51706225 (最終閲覧日:2020年5月18日)
3. EL PAÍS. Antibody study shows just 5% of Spaniards have contracted the coronavirus. https://english.elpais.com/society/2020-05-14/antibody-study-shows-just-5-of-spaniards-have-contracted-the-coronavirus.html (最終閲覧日:2020年5月18日)
4. Osaka City University. 新抗体価測定システムが高い精度で陽性を判定! ~疫学調査により、大阪では1%程度が抗体を保持~ https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2020/200501 (最終閲覧日:2020年5月18日)
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別添資料1

提言 新型コロナウイルス感染症対策に向けた医療提供体制整備

 

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者(COVID-19 患者)に対応するための医療提供体制の拡充は急務であるが、一方で、長期的な感染蔓延状態を見越して、通常の診療・救急体制を確保することも重要である。

≪概要≫

(1)短期(緊急事態宣言解除の基準)

・新型コロナウイルス対応病床利用率が6割(p)を下回る

医療崩壊を回避できている1つの指標として、新型コロナウイルス対応病床利用率が挙げられる。これが6割を下回ることを解除の目安とする。ただし、地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら数値目標を調整する。

 

・集中治療室病床利用率が4割(p)を下回る

新型コロナウイルス対応病床利用率と同様に、最重症患者に対する医療が十分供給できていることの指標として、新型コロナウイルス患者用に確保された集中治療室病床利用率を用いる。医療現場の声を聞くと、4割を下回ることを解除の目安とすることが妥当であると考える。ただし、地域によって人的・物的医療資源の状況が大きく異なるので、都道府県ごとに医療現場と緊密に連携しながら数値目標を調整する。

 

(2)中期(緊急事態宣言解除後)

・新型コロナウイルス対応できる集中治療病床と人材確保の計画をたてる

非常事態宣言時、最も高くて県内の人工呼吸器のうち2.5%が新型コロナウイルス感染症患者に占拠されている状況であった。また、集中専門医一人当たりの人工呼吸管理患者数は、0.4で現場の負担が大きい状況であった。これは、地域の医療資源が十分新型コロナウイルス感染症に確保できていないことを意味する。第2波に備え、都道府県が中心となり、地域の実情に合わせて病院や医療従事者の役割分担を進める必要がある。

新型コロナウイルス感染拡大期における人材としては、Covid19-JMATのさらなる活用、集中治療の経験があるが現場を離れている者や一般病院や医院などで働いている者などが考えられる。感染拡大により業務が縮小された診療科の医師をトレーニングし、専門家と共に勤務をするという方法もある。地域の実情に応じて活用できる人材は異なると考えられ、各自治体や医師会を中心に連携して人材確保に努める必要がある。確保した人材は、病床&人材をマネジメントするチーム(コントロールチーム)、検体採取&重症度評価チーム、軽症者施設のフォローチーム、中等症チーム、重症チームなど、必要時すぐに配置できるような、事前チーム編成と教育を行う。なお、人材確保に当たっては下記に詳細を示すように、安全の確保と危険手当や子どもの保育や医療従事者の滞在先の支援などの保障を充実させることが必須である。また、開業医など一時休院する場合は、経済的支援と共に、他の病院・医院と調整してその地域の患者をカバーする必要がある。特に医療機関の少ない地方ではこれら調整機能は自治体や医師会が積極的に行うべきである。

 

・新型コロナウイルス感染症軽症者用の隔離施設を確保する

新型コロナウイルス対応病床とは別に、軽症者を収容できる施設の確保することは、病院の負担を減らす上で重要である。

 

・医療資材の確保

感染防護具の不足が指摘されている。医療従事者を守り、院内感染を防ぎ、医療提供体制を維持するために、安定的な供給体制の構築が必要である。世界的に供給が不足なる中、国内で生産できる体制整備を進める。

 

・ITを活用し、効率よくデータ収集とモニタリングができるようにする

地域の新型コロナウイルス感染者用に確保された集中治療病床、人工呼吸器台数およびそれらの占有率、PPEの普及率、人材確保の程度は、データが収集される仕組みがなく、リアルタイムなモニタリングが困難である。特に、非常事態宣言の実施や解除の決定に影響を与える病床占拠率などは、情報が集約、公開されモニタリングできるようにすることが必要である。

また、IT活用による業務効率改善も期待される。ITによる新型コロナウイルス患者の遠隔モニタリングができれば、医療従事者が患者と接触する機会を減らし、業務効率の改善だけでなく、医療従事者の感染リスク軽減につながる。保健所によるPCR検査集計なども電子化により集計や公開をより迅速に行うことができる。

他国のように、ITを用いて感染者が出た際の濃厚接触者の追跡も検討の余地はある。日本においては個人情報保護の課題があるが、個人の人権がしっかりと保護された形で行えれば、濃厚接触者の早期特定と感染症の封じ込めに貢献することが期待される

・ハイリスク患者に対する医療提供体制確保
新型コロナウイルス感染リスクや重症化リスクが高い心血管系疾患、糖尿病、がん、免疫抑制剤使用中の患者、妊婦などに対する治療を提供している病院では、救急患者などとの出入り口を分離する、遠隔診療を積極的に取り入れるなど、感染リスクを回避する体制を整備する必要がある。

・必須保健サービス提供体制の確保
新型コロナウイルス感染症流行時期であっても、妊婦健診、乳児健診、予防接種など、必要な保健サービスを三密を回避した状態で提供する施設・スタッフが確保できる体制をつくる。

(3)超長期(新型コロナウイルス感染症終息後)

・集中治療感染症対応病床増加と、集中治療・救急医療を担う人材の育成
新型コロナウイルス感染症流行以前より日本の集中治療における人材不足は指摘されてきた。新型コロナ感染症対応といった短期的な目標にとどまらず、集中治療・救急医療の地域格差の是正のために、集約化や適正な医療資源・人材の配置により効率よく医療を提供するために、医師の育成、配置、専門医制度などを見直し、て十分な集中治療・救急医療を提供できる体制を整備する。また、不足している感染症人材も同様に育成することが必要である。地域での感染症病床にいつでも転換できる病床確保とともに、特に、集中治療や感染症人材を育成して十分な集中治療を提供できる体制を整備する。

 

≪詳細≫

(1)地域毎に感染拡大状況に応じた病床再編計画を立て、地域の病院・診療所、在宅、薬局での協働・役割分担の推進と財政支援を行う

(1-1)課題の整理

1-1-1 病床確保

各都道府県で病床確保の努力が続けられているが、感染拡大状況に合わせた重症・中等症患者を受け入れる病床・機材・人材の確保が不十分であり、感染拡大期には各地での人工呼吸器対応ができる病床は圧迫されている。最悪のケースを想定した患者数を収容できる人数にはまだ病床確保数は足りていない状況である。一方で、現在、感染症病床の占拠率、COVID-19患者による体外肺装置(ECMO)・人工呼吸器使用率はいずれも非常事態宣言開始時に比べて低下している(図1、図2)。今後感染状況に合わせて、感染が拡大した際にどの病院でどの程度の重症度の患者の為のベッドを何床増やすのか、感染が落ち着いた際にはどのように一般病床に戻すかの指針が存在せず、状況に合わせた適切な病床確保が困難になっている。

1-1-2 軽症者対応

軽症者を受け入れる施設が足りないことから、PCR検査で陽性になっても患者を収容できず、感染拡大防止対策の上で困難が生じている。また、自宅待機せざるを得ない状況のため、家族内での感染拡大が起きている。また、散在する軽症者の健康モニタリングを行うのは効率が悪く、症状の変化を早期に発見できない恐れもある。

また、全身状態は改善しており自宅療養が可能であるにもかかわらず、「PCR検査で2回陰性確認が必要」という退院基準の為に入院継続となり、新たな患者の受け入れができず医療スタッフの負担も持続するという悪循環となっている。

1-1-3 医療者安全とPPE確保

感染症にあたる医療機関でPPEなどの防護具が不足していることが指摘されており、医療従事者の感染リスクやストレスの増大につながっている。院内感染が拡大すれば、医療崩壊の引き金になる危険があり、防護具の安定的な供給が望まれる。一方で、N95マスクなどこれまで我が国で生産していなかった医療資材が世界的な感染拡大に伴い確保できない事態となっている。

1-1-4 新型コロナ以外の医療

新型コロナウイルス感染症対応病院での一般診療の縮小、ICUなど集中治療をできる病床を新型コロナウイルス感染症に再編したために、一般の救急患者の受け入れが困難なケースも起きている。また、感染への恐れから、受診を控える動きもあり、受診患者数は減っている。必要なのに受診せず、診断や治療が遅れる恐れがある。特に、新型コロナウイルス感染リスクや重症化リスクが高い心血管系疾患、糖尿病、がん、免疫抑制剤使用中の患者、妊婦などにいかに安全に医療を提供する体制を作るかが課題である。

 

1-1-5 医療機関倒産による医療崩壊

新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ有無にかかわらず、病院の約8割で経営が悪化しており6月以降財政難に陥ることが予測される。特に、新型コロナウイルス患者を受け入れるために待機手術の延長や、救急搬送患者の受け入れ制限をした病院では、来院患者の減少により収入が減少し病院経営に影響をきたしており、今後の経営悪化で今後の感染症の対応が適切にできなくなる可能性が指摘されている。現状の新型コロナウイルス感染症対応による診療報酬上乗せだけでは、一般診療減少による減少分を補填できない。このままでは病院は経営難に陥り、賞与支払い困難なために医療者の離職が促進し、医療崩壊が加速される恐れがある。政府からの資金援助の動きが進んでいるものの、長期的で持続可能な財政支援が必要と考えられる。

1-1-6 地域医療体制の緊急時指揮系統について

緊急時の指示系統が分散されており、効率的に現場に指示が下りず、混乱や実施の遅れにつながっている。現時点での指示系統は、厚労省から都道府県・保健所からさらに医療施設、医師会から医療施設、大学病院への通知、また行政の対応を踏まえた各学会からの声明・通知などである。保健所から病院への指示の間に、1-2週間の時差が生じることもあり、対応の遅れや、指示系統間の情報の齟齬などが懸念される。

(1-2)対策案

1-2-1 病床確保

都道府県ごとに、予測される最大感染者人数を基に、感染状況に応じて段階的に病床を感染症病床に再編する計画を立てる

まずは、感染拡大状況に応じて必要な病床数の指針を政府または厚生労働省がデータに基づいて示す必要がある。

各都道府県においては、感染拡大レベルに応じて、地域のどの病院の病床を感染症病床にし、一般病床に戻すかを、あらかじめ関係者で協議し、決めておく。具体的には、病床確保のために延期する手術や処置・治療まで計画に入れ、定期手術を延期した病院にはその分の収入を保証するなど、資金面のサポートも考慮を行うことで、公的病院・私立病院によらず感染拡大期に備える体制を構築する必要がある。

発熱患者の診療拒否や救急搬送拒否により、特定の医療機関への負担が増大している地域では、感染予防などの観点で各診療所での対応が難しい場合は、各地域で発熱者対応外来を設置するなど、地域全体で患者の対応にあたる必要がある。

どうしても新型コロナ感染者の受け入れが難しい病院に対しては、感染症対応病院から一般診療の患者を転送するなど、柔軟に患者を移動できるように連携を行う。

感染症指定病院以外の一般病院のもつ院内感染に対する危機感に対応するため、地域に感染症コンサルタントを設置し、感染症病棟を設置する際に、感染症対応の支援を行う必要がある。また、現場で具体的に活用できる感染制御ガイドラインや指針を厚生労働省や学会が作成し提示する必要がある。

 図1 都道府県別の感染症病床占拠率推移(2020年4月13日~5月11日)(NHK調べより)

図2 COVID-19患者による全国のECMO・人工呼吸器占有割合推移(2020年2月14日~4月14日)

 

1-2-2 軽症者対応

新型コロナウイルス感染症の軽症患者隔離施設の拡充と軽症者の効率的なモニタリングを実施する

宿泊施設など、軽症者を隔離収容できる施設を整備する。これも病床再編の計画と同様、都道府県ごとに地域の感染の拡大状況に応じて柔軟に増減できるよう、調整を行い、計画を立てておく。軽症患者の健康状態の継続的モニタリングと、容態変化時の搬送システムは必須である。モニタリングの際、医療従事者となるべく接触しないよう、ICTを活用した遠隔モニタリングを実施する。また、個人の判断に任せなくてよいよう、診療の手引きに沿って、入院の基準を決めておくとよい(SpO2の数値、呼吸器症状など)。また、重症・中等症で入院し回復した患者も、容態が安定していれば軽症者の施設に移動し、モニタリングを継続する。患者の容態によって軽症者施設、入院施設と柔軟に移動できるようにすることで、病床が長い時間占拠されてしまうことを防止できる。

今後の流行の再燃に備えて、SPO2モニターなど十分な物品の確保、SpO2遠隔モニタリングを始めとした最新システム、また軽症患者隔離施設のガイドラインの作成を行い、感染拡大期に迅速に対応できるよう努める必要がある。

また、病床の確保と医療スタッフの負担軽減の観点からも、退院基準の見直しが必要である。PCR検査で陽性であることは感染力があることと同義ではなく、症状出現後8日目以降は上気道からの検体でウイルス分離をできなかったという報告がある。わが国でも、PCR検査陰性のみを退院判断するのではなく、症状出現からの期間なども組み合わせた退院基準を策定する必要がある。

1-2-3 医療者安全とPPE確保

感染防護具の感染症対応医療機関への優先的配布と、国内での防護具生産体制の整備

新型コロナウイルス感染症対策にあたる病院に対しては、優先的にPPEなどの医療資源を分配する必要がある。サージカルマスクは少なくとも1日1枚は交換できるよう、優先的に配分するなどの積極的な対応が必要である。医療従事者の感染予防が充分になされていない状況が持続すると、感染への不安による医療従事者の離職から、医療提供体制が維持できなくなる恐れがある。効率的な資源配分を行うためにも物資の状況をオンラインで即時的にモニタリングできることが望ましい。また感染を疑う症状があれば医療従事者に優先的に抗原検査・PCR検査を実施し、院内感染の防止を行う(検査実施とオンラインモニタリングは、それぞれ検査、ITの項)

また、新型コロナウイルスの感染予防・診断・治療に必須な製品が充足するように、国内企業での原材料調達を含めた生産支援体制を構築し、必要としている医療機関への適切な配布が行われる体制整備が必須である。

1-2-4 新型コロナ以外の医療

一般診療のための病床確保とオンライン診療、マイ薬剤師・かかりつけ医制度を促進する

新型コロナウイルス感染症以外の救急患者や産科救急にも対応できるよう、また予定手術が再開できるよう病床や人材の確保が必要である。病院の少ない地方では病院ごとに機能を分けるのは難しいが、新型コロナウイルス感染症対応をしていない病院に積極的に一般診療を回すなど、病院をまたいだ患者移動を経営面での不安なく行える協力体制が必要である。災害時にはDMATが設置されているが、感染症においても勤務をしている医療機関の垣根を超えて、医療ニーズが逼迫している医療機関の診療支援(Covid19-JMATやこれまでのJMATの拡大運用)ができるような体制整備が求められる。そのために、都道府県が中心となり、医療機関間の調整を行うコーディネーターを設置するなどの調整機構を整備することが不可欠である。人材確保としては、JMATのさらなる活用、集中治療の経験があるが現場を離れている者や一般病院や医院などで働いている者などが考えられる。感染拡大により業務が縮小された診療科の医師をトレーニングし、専門家と共に勤務をするという方法もある。地域の実情に応じて活用できる人材は異なると考えられ、各自治体や医師会を中心に連携して人材確保に努める必要がある。また、病床&人材をマネジメントするチーム(コントロールチーム)、検体採取&重症度評価チーム、軽症者施設のフォローチーム、中等症チーム、重症チームで感染拡大をしたらすぐに人材を配置できるような、事前チーム編成と教育を行う。災害時にはDMATやJMATという組織が設置されているが、感染症においても勤務をしている医療機関の垣根を超えて、医療ニーズが逼迫している医療機関の診療支援ができるような体制整備が求められる。人材確保のためにさらなるJMATの活用、また、従事するものに対しては十分な教育と、費用面での補助が必須である。

在宅医療についても、担当医が感染した際に、その地域をカバーできるように、在宅医同士でのネットワークの構築が必要である。地域によって、市中病院が在宅医療を担っているところは、当該病院への人材集約が望まれる。医療従事者内に感染者が出た時のためにローテーション制で勤務に当たることが一案として知られているが、そのためにもローテーションが可能となる医療人材を確保する必要がある。

また、接触機会を減らし、感染リスクを低減するために、withコロナ時代は、オンライン診療を促進する。また、遠隔診療で処方した薬の服薬指導は近くの薬局が担うとともに、相談に乗ったり、健康状態のモニタリングを行い、必要があれば病院に連絡するなどの連携を行うことで、遠隔診療を補完することができる。

患者が発熱外来に殺到したり、診断を受けるまで複数の病院を受診して感染拡大リスクを増やす危険を避けるために、かかりつけ医の促進も有用と考えられる。

 

1-2-5 医療機関倒産による医療崩壊

新型コロナウイルス感染症受け入れ状況に関わらず、地域の主要な病院に対して経営資金援助を行う

病院・在宅診療ともに、資材の共同購入などの連携を行い、コストを削減するための努力が必要である。地域ごとに、医師会などがまとめ役を担うことが期待される。また、地域のニーズに合わせた診療科や病床など整備推進が期待される。

病院経営の悪化は必至であり、特に一般診療を減らして新型コロナウイルス感染症患者受け入れに当たっている病院や一般診療を担う地域の基幹病院など優先的に資金援助を行い経営支援を行う必要がある。

 

1-2-6 地域医療体制の緊急時指揮系統について

国レベルの関係者間の協力関係を構築し、緊急時の政府からの指示は関係者間で共有・合意した上で、一貫したメッセージを各機関に発出する

政府から指示を伝える時には、自治体ラインだけでなく、医師会や大学病院のラインでも同様の指示を同時に伝える必要がある。それにより、即時に現場のステークホルダーに情報が届き、協働を行いやすくなると考えられる。そのためには、医療界の代表者が都道府県庁と共に、指揮できる体制が望ましい。尚、これら多系統にわたる指示の内容やタイミングに差があると、現場ではどの指示に従うべきか混乱をきたすため、指示や通達を発出する際には可能な限り横の連携をとり内容に齟齬がないか検討した上で行われるのが望ましい。

 

(2)新型コロナ感染症検査体制の拡充

(2-1)課題の整理

2-1-1 受診基準について

2020年5月8日に「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」が改訂された。この改訂によって、相談の遅れを防ぐことが期待されている。また、患者を早期に発見し、隔離することで、感染拡大を防ぐことが期待できる。

しかしながら、基準があいまいになったことで、住民にとっては「自分が合致するのか不安」という状況を引き起こし、「特に理由なく、ただ心配であるから」という理由で「帰国者・接触者相談センター」に電話をかけたり病院を受診することが懸念される。また、非常に軽微な症状での相談が増え、保健所や帰国者・接触者相談センターの業務が圧迫されることが懸念される。特に、一般的に患者数が増え、新型コロナ感染症の再流行も懸念される冬には、医療機関への負担が大きくなる可能性がある。特に、これまで新型コロナウイルス感染賞重症患者に対応する病院が軽症者の検査も担っていたため、対応病院の負荷が大きくなっていた。また、他国では検査のために患者が殺到し、待ち時間で感染拡大が発生したといわれており、そのような事態は避ける工夫が必要である。

感染拡大のフェーズごとになぜ、検査を実施する目的や、「相談・受診の目安」を明確に示すことで、国民自身が状況を判断し適切な相談・受診につなげることができると考える。何を目的に変更されるのか、国民に分かりやすい説明とともに明確な目安を伝え、認識を共有する必要がある。

2-1-2 検査方法の目的について

様々な検査法の使い分け・目的が不明確である

現在、新型コロナウイルスの診断にはPCR検査が用いられている。そのPCR検査の実施基準が不明確であることはすでに述べた。PCR検査以外にも、抗体検査や迅速抗原検査が開発されている。迅速抗原検査は薬事承認がなされ、抗体検査もまもなく承認なされる見込みである。

このように様々な検査方法があるが、その検査の目的や結果の解釈、そして臨床や社会生活でどのように活かせばよいか、指針が示されていない。そのため、検査が行われても正しく解釈されない弊害が懸念され、具体的には偽陰性の可能性があるにも関わらず「感染していない」と判断して社会活動を継続することで感染拡大を引き起こす恐れがある。また、検査の限界や目的が十分周知されていないことにより、就労先や学校から感染していないことを証明する(いわゆる「陰性証明」)ために、検査を受けるよう指示されたために受診にする患者による現場負担も報告されている。

このため、検査法の使い分けの指針・ガイドラインを策定周知することが重要と考えられる。

 

2-1-3 検査の試薬について

安定的な検査の試薬が不足する恐れがある

メディアがPCR検査数を増やすよう連日報道していることもあり、一般市民ではPCR検査をうけられないことに不満が出現している。しかしながら、PCR検査を実施するために必要な試薬は全世界で争奪戦に陥っており、日本も例外ではない。また、海外では迅速抗原検査が市販されたことにより一般住民が購入したため、医療機関にいきわたらないという問題が生じている。

現時点では感染の爆発的な拡大は抑えられているが、今後第2波・第3波が起きた時に「本当に新型コロナウイルスかどうか診断する必要がある人」に対して、試薬が不足していることにより検査が実施できず、正確な診断や適切な治療につながらない恐れがある。

2-1-4 必要な人への迅速なPCR検査の実施

必要な人に対してPCR検査が実施できない、また実施できても結果判明までに時間を要する

現時点で新型コロナウイルスの確定診断にはPCR検査が用いられている。このPCR検査には、すでに述べた試薬の問題以外にも、検査を実施するには専門性を有する技師と、実施するための設備が必要である。保健所経由の検査のほとんどは公的機関で実施され、一部の検査設備や技師を有する病院においては自施設内で実施している。

公的機関で実施できる検査数には限りがあり、検査技師への負担を考えると「休むことなく検査を行い検査数を増やす」ということは非現実的である。そのため、「実施可能な検査数に限りがあるから検査を制限しているのでは?」という懸念や、感染拡大期には「受診当日にPCR検査ができず翌日検査のために受診した」「PCR検査を実施してから結果が分かるまでに2日要した」等という事例が認められた。

必要な検査が適切なタイミングで実施されていないのであれば、患者に適切なケアを提供できないという問題と同時に、患者の数を把握することができず適切な感染対策が実施できないという問題が生じる。

 

(2-2)対策案

2-2-1 受診基準について

第2波に向けて検査適応者の増大を見越した、住民のリスクに応じた「相談・受診の目安」を設定し現場の負担軽減策を図る

相談の目安は、患者の背景(高齢者・基礎疾患を有する人・新型コロナウイルス感染者との接触の有無、エッセンシャルワーカーとされる職種など)によって異なるはずであり、患者のリスクに応じた相談の目安を設定することで患者の不安が軽減され、「帰国者・接触者相談センター」の負担軽減にもつながると思われる。具体的には、高齢者や基礎疾患を有するひと、妊婦、濃厚接触者、エッセンシャルワーカー、その他特に基礎疾患のない人、それぞれに受診の目安を作成し、フローチャート形式で示すことで自分が相談する必要があるかどうか住民にとって判断しやすいと思われる。

現在感染拡大は落ち着きつつあるが、今後第2波・第3波が起きる恐れがある。現在、PCR検査体制の拡大が図られているが、役割分担がきちんとされなければ、患者が増えた時に一部の病院に負担が大きくかかることになる。検査を担当する施設や医療従事者と、重症患者に対応する病院・医療従事者は分けることが望ましい。

感染拡大期と、感染が落ち着いている時期では、PCRの検査の陽性的中率が異なるため、各フェーズごとの検査の目的を明確にし、「相談・受診の目安」も感染拡大のフェーズに応じて提示され、貴重な医療資源が有効に使用されることが望ましい。一方で、常に感染拡大リスクの高い高齢者施設や医療機関では、閾値を下げて積極的に検査することも考慮される。

一方で、不安による受診増加による病院への負担を防ぐために、引き続き国民に対する啓発は必要である。相談の目安は、患者の背景(高齢者・基礎疾患を有する人・新型コロナウイルス感染者との接触の有無、エッセンシャルワーカーとされる職種など)によって異なるはずであり、患者のリスクに応じた相談の目安を設定することで患者の不安が軽減され、「帰国者・接触者相談センター」の負担軽減にもつながると思われる。具体的には、高齢者や基礎疾患を有するひと、妊婦、濃厚接触者、エッセンシャルワーカー、その他特に基礎疾患のない人、それぞれに受診の目安を作成し、フローチャート形式で示すことで自分が相談する必要があるかどうか住民にとって判断しやすいと思われる。

2-2-2 検査方法の目的について

PCR検査、迅速抗原検査、抗体検査の使いわけ・判断指針を明確にする

PCR検査、迅速抗原検査、抗体検査の感度や特異度、その結果から新型コロナウイルス感染についてどのようなことが分かるのか、を明示し臨床の現場で医師や患者が検査の実施に関する判断が適切に行えるようにする必要がある。

また、検査の結果によっては偽陰性や偽陽性の可能性もあり、新型コロナウイルスについては現場の医師も十分な臨床経験の蓄積がまだないことから、国や関連学会が検査結果や患者の臨床状況に応じた対応についても明示することで、患者が適切な医療を受け、また過剰な医療が実施されないよう配慮する必要がある。

具体的には、ガイドラインを策定し、患者の症状や医療機関で使えるリソース(院内でのPCR検査実施体制の有無、PCR検査の結果判明までの時間など)に応じた検査の流れ、またその結果に応じた対応をフローチャートで示されていると、忙しい臨床の現場において有用と思われる。また、「陰性証明」のための検査実施や受診は医療機関に負荷をかけるため、企業や教育機関に対して陰性証明や診断書の提出を求めないよう指導するとともに、国民に対しても周知する必要がある。

「SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン(案)」では、PCR検査で陰性となった先の対応が示されていない。「PCR検査で陰性だった患者」に対しては、全身状態によって入院が必要な患者の場合は院内の感染予防の観点で、全身状態が良好で帰宅可能な患者の場合は自宅安静や今後のフォローアップの観点で、対応に苦慮しているところであり、指針の策定が望まれる。

 

 

2-2-3 検査の試薬について

検査に必要な試薬を確保し、適切に検査を利用する

検査体制のみではなく、試薬のストック状況や使用状況を定期的にデータ収集、モニタリングして適正な量に保ち、特に感染拡大の必要時に滞りなく試薬の供給ができるように準備する必要がある。

各種検査を実施するにも資源の制約があり、今後の感染拡大を見越して検査の試薬を確保する必要があることを国民に周知する。国として感染状況に応じてどのように検査を活用して感染対策を講じていくのか明確な指針を策定し国民に示すべきである。指針作成時には、検査の充足状況やワクチンや特効薬の開発状況・感染の拡大状況によって、指針は適宜改訂される恐れがあることを予め記載し、また改訂時にはその改訂の理由を明記し国民に混乱が生じないようにする必要がある。

これと同時に、他の医療提供の指標と同様に、検査試薬の確保状況を随時国民にWeb上で公開し、新型コロナウイルス感染症の対策状況を国民が確認できるような体制を整備する。

 

2-2-4 必要な人への迅速なPCR検査の実施

必要な検査が迅速に行えるよう官民を巻き込んだ検査体制を構築する・唾液検査推進

検査体制の整備において重要なことは、可能件数を引き上げることのみならず、検査の質を維持しながら検査を必要なとする患者が検査を受けられる体制を構築することである。症状から新型コロナウイルス感染が疑われる人や濃厚接触者に対し、迅速にPCR検査が実施できる体制を構築する。具体的には、公的機関のみならず、大学や民間のPCR検査等実施可能な設備や人材を有する研究機関とも連携し、経済的支援をしながら検査を実施し、その結果を集約できるシステムを構築する必要がある。

また、PCR検査のための検体を採取するためのセンターを地域に設置し、その運営においても地域の医師会が中心となり検体採取を行う地域発熱外来・PCRセンターを全国展開するなど、特定の医療機関に負担がかからないよう、地域としてこの感染症への体制整備を構築する必要がある。

診療所でもPCR検査のための検体を採取することを可能とする場合は、厚生労働省として感染予防のためのガイドラインを策定し、検体の回収・患者情報の収集などで現場が疲弊しない様に体制整備を整える必要がある。

また、現状でPCR検査が診断確定のためにスタンダードに用いられている検査であるが、今後迅速抗原検査が普及した際にはこの検査を活用した検査体制をあらかじめ想定し備えておく必要がある。

さらに、検体採取法として唾液を用いることが他国において検討され実施されつつある。そのような検体採取にかかる実施法についてもより安全で簡易な方法を模索することも同時に行っていくことが望まれる。

尚、検査体制の整備においては、各関係機関の事務負担の軽減と結果の集計を容易にするために、患者情報の入力や同意書の取得などにおいては紙運用を極力廃止しパソコン入力やタブレット入力などのITを活用することが望ましい。

(3)新型コロナウイルス感染症最前線での人材不足の補填と、一般診療に従事する医療者の確保ともに、医療従事者の安全と報酬を保障する

(3-1)課題の整理

3-1-1 新型コロナウイルス感染症治療最前線での人材不足

新型コロナウイルス感染症治療最前線での人材不足が深刻であり、病床を増やしても患者対応ができない可能性が懸念される。また、少人数で治療にあたるため十分な休息がとれない過酷な勤務状況の中で、医療ミスや医療従事者の感染や精神的負担が増加する恐れがある。また、単純に増員するだけでは不十分であり、呼吸器や集中管理などに関するある程度の知識や経験が必要とされる。新型コロナウイルス感染症に対応する最前線は多忙を極めて疲弊する一方で、一般診療は減少しており、経営が困難な病院やクリニック、薬局も存在している。医療従事者の仕事量に偏在が生じており、人的資源を有効に活用できていない。

3-1-2 医療従事者の離職への懸念

新型コロナウイルス感染症対応の有無に関わらず、医療従事者は日々感染の恐怖と闘いながら診療に当たっており、その精神的負担は計り知れない。感染への不安から、医療現場を離れる医療従事者も出ており、医療人材不足にさらに拍車をかける事態が懸念される。

 

3-1-3 医療人材育成の停滞による人材不足の深刻化の恐れ

緊急事態宣言後、医学部生の授業・実習がオンラインに移行、もしくは停止している状況となった。緊急事態宣言が解除される見通しとなり、感染拡大が落ち着いている地域では病院実習を再開している大学もある。しかしながら、まだ病院実習や研修など通常の学習環境が提供されていない大学や研修指定病院も存在する。この状況が続くことは、新しい医療人材の育成が滞ることにより人材不足がより深刻化する恐れがある。

 

(3-2)対策案

 

3-2-1 新型コロナウイルス感染症治療最前線での人材不足

地域内で連携し、新型コロナウイルス感染症対応病床の増加に見合った適切な人材の確保と柔軟な配置を行う
新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ数が少なく、一般診療や予定手術が減っているなどの理由で通常業務が減少している病院や、患者数が減っている診療所の医療従事者に対し、負荷が増大している病院での勤務を可能とするなど、病院の垣根を超えた医療従事者の就労を認める。DMATや救護班などのクルーズ船をはじめとした災害派遣にかかわる医療職種と、今回の新型コロナウイルス感染症で求められる人材が完全にオーバーラップはしていないことも指摘される。その際、集中治療経験がある者を優先的に新型コロナウイルス感染症対応病棟に配置する、新型コロナウイルス感染症病床で働くことを希望した医療従事者に対しては、国が危険手当報酬を補填するなどの対応が必須である。また、診療所を休診する場合には、他の診療所に患者を回すなどの調整が必要であり、経済的支援とともに、地域の医師会などが調整役を担うことが望ましい。

人工呼吸器や体外肺装置(ECMO)の運用をはじめ、集中治療を担える人材の育成が人材確保と同時に必要である。現在は、日本COVID-19対策ECMOnet(日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本呼吸療法医学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会、PCPS/ECMO 研究会)がECMO導入施設のサポートを行っている。
重症新型コロナウイルス患者の診療で必要となる人工呼吸器やECMO治療には専門的な知識が必要であり、知識を有する医師・看護師・臨床工学技士が必要となる。人材育成には症例の経験を積む必要があり、日本のECMO診療の成績が諸外国と比べると良好であることを考えると、ECMOnetによるサポート体制が感染拡大の早期においては有効であったと思われる。今後の第2波・第3波への備えとしては、新たに集中治療に携わる人材への教育体制を構築するともに、ECMO台数を増やすに際にはECMO対応可能施設を増やすよりも現在の施設数を維持もしくは集約化を行い、技能を有する人材・患者の集約化を行うことが望ましい。

 

3-2-2 医療従事者の離職への懸念

医療従事者の安全と勤務環境や報酬の保障とメンタルケアを充実させる

 

病院内・薬局での感染予防のための具体的な感染予防マニュアルの周知と実践のための教育体制整備が必要である。感染症指定病院以外の医療施設では、マニュアルだけでの実践は困難である。感染対策について相談できる感染症コンサル制度を地域で整備することも有用と考えられる。また、感染予防のための医療資材の配備、感染を疑う症状がみられた時には直ちに検査・必要時の治療を受けられるようにするなど、医療従事者を感染から守るための取り組みを徹底すべきである。ここでいう医療従事者は、直接病院で患者を診察しない事務職員や薬局薬剤師など診療の維持に必要な職員全てを含む。医療従事者が働けるよう、子どもの預かり場所の確保(保育所での優先的な受け入れや、シッター代金のサポートなど)などの支援に加え、特に、新型コロナウイルス感染症対応にあたっている医療従事者に対しては、危険手当などによる報酬の上乗せ、メンタルヘルスの定期的なモニタリングとサポートが必要である。

 

3-2-3 医療人材育成の停滞による人材不足の深刻化の恐れ

オンラインを活用し、医学生の育成を継続する
文部科学省、厚生労働省、大学で協議し、オンライン授業やオンライン実習の質を担保するために指針を作成し、今後感染の再燃を想定し感染拡大のフェースに応じた実習や研修の再開時期の目安や中止継続に関するガイドラインを示す必要がある。また医療系学生に限った問題ではないが、オンライン授業や実習の支援など学生の学ぶ機会の確保を行う体制が求められる。

 

(4)IT化の促進により医療従事者の感染リスクと業務負担を低減する

(4-1)課題の整理

4-1-1 新型コロナウイルス患者・病床の状況をリアルタイムで確認できる仕組みが存在しない

新型コロナウイルス感染症患者に対応できるか、一般の救急患者の受け入れが可能か、PPEが充足しているかなど、医療提供体制の整備状況を随時モニタリングし、関係者で共有していくことで、病床や患者搬送の調整がしやすくなることが期待されるが、現場が入力しやすく、活用できる、リアルタイムに更新されるデータ収集や公開の仕組みが存在しない。現在、政府CIOポータルでは、医療リソースをマッピングした情報が公開されているが、地域で集約した情報で各病院の状況が不明であるため、病院間の連携としてはデータの活用ができない。また、入力情報が多く、煩雑で、現場の仕事を圧迫し、最終的に利用されない、入力される情報の信頼性の低下などにつながることが懸念される。また、調査結果が公開されていないため類似の問い合わせが異なるチャネルから繰り返し実施され、医療機関の負担を増大させている。

4-1-2 紙ベースで情報収集が行われるため、医療スタッフに負担がかかっている

新型コロナウイルス感染症の感染状況は、PCR検査や結果集計などが紙ベースで行われており、当日の検査数や結果をまとめるのに時差が生じたり、集計ミスを生じることにつながっている。また、保健所で実施した検査と病院で実施した検査をまとめるのも困難な状況となっており、リアルタイムで検査の全数と陽性率をモニタリングすることが難しくなっている。今後、新型コロナウイルス感染症検査を実施する医療機関が増えれば、保健所の情報収集に対する負担はさらに増大することが懸念される。

4-1-3 業務が効率化できないことにより医療従事者の感染リスクや負担が増大している

新型コロナウイルス感染症患者の診療は、感染防御のために手間が多く、人手がかかる。また、PPEの着脱が多いと医療者が感染するリスクも高くなるため、必要な処置時以外はなるべく患者と接触しない仕組みが必要である。また、保健所も業務過多で新型コロナウイルス感染症対応以外の業務が中断される事態が起きており、業務の効率化が望まれる。

4-1-4 感染状況や医療提供体制の情報が公開されないことにより国民に不安が増大している

感染状況の実態や医療提供体制の確保の状況が公開されておらず、国民の不安増大や政策に対する信頼の低下につながっている。

 

(4-2)対策案

4-2-1 入力・閲覧が容易な医療提供体制モニタリングシステムを構築する

現場が、地域の各病院の病床の空き具合を把握し、患者の移送を効率よく行える、また医療資源の偏在を見える化し、必要な資材を必要な病院に届けることに活用できる仕組みが望まれる。忙しい医療現場において入力が容易にできるオンラインシステムを構築し、また類似のサイトを国・自治体で複数構築して入力の手間を増やす事のないよう、情報集約システムを一本化する必要がある。各地域ごとの患者状況がわかることで、地域内の患者調整の効率化の促進や、地域を超えた患者搬送などの協力体制の構築が期待される。

「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」が厚生労働省により新たに開発されたが、政策立案・公衆衛生・臨床の各ステークホルダーにとって有益なデータベースとするために、入力するデータやその構造などに関しては各専門家の意見を取り入れるべきである。

4-2-2 検査の実施数と結果を即時に更新・共有できるオンライン仕組みを構築する

保健所と病院で共有・アクセスできるデータベースを構築し、検査の実施と結果を各機関においてオンライン入力できるようにする。保健所が情報収集する手間を省略することも期待できる。今後、PCR検査の検体採取場所として診療所を活用したり、民間や研究機関でもPCR検査を行う可能性があることを想定し、スマートフォンやタブレットでも入力が可能とするなど実装が容易なシステムを構築する必要がある。

4-2-3 ITの活用により、保健所・医療機関の業務の効率化を図る

感染疑い患者への問診や軽症者・経過観察患者のモニタリングをオンラインや遠隔モニタリングシステムで実施できる指針の作成やオンラインシステム導入のための資金的援助が求められる。ITの活用により、業務が効率化することで保健所や病院での負担が軽減し、現在中断されている新型コロナウイルス対策以外の業務(保健所・保健センターにおける乳児健診や予防接種、両親学級などの子育て支援事業、病院における一般診療の受け入れなど)の再開が可能となり、それと同時に患者への接触機会が減ることによる医療従事者の感染防止につながる。

4-2-4 データ公開により国民との協働を推進する

医療提供キャパシティ、感染状況をリアルタイムで更新し公開することは、関係機関の協力を促進させるだけでなく、国民への情報提示による行動変容の促進、国民に対する施策の効果の説明責任を果たすうえでも重要である。また、データを公開することで多くの研究者によるデータ解析が可能となるため、新型コロナウイルスの病態の解明や感染対策に関し、広く知力を結集し課題解決のための方策を迅速に見出すことが期待される。

今後、各都道府県において自粛要請の開始・解除の基準の策定が予想されるが、その際には「算出方法」「利用データ」を明示し、さらにはそのデータをcsv形式で公開することにより、検証が可能となり施策への信頼性が高まると考えられる。

新たに稼働する「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」においては、速やかにデータを分析し課題解決や治療法の発見につなげるために、データは広く公開し仮にデータの利用申請に手続きを必要とするにしても煩雑な手続きは極力省き、データの利活用促進に努めるべきである。

また、濃厚接触者追跡アラートのように、感染者が見つかった際に濃厚接触者に通知を送ることで、国民の不安を軽減するととともに、濃厚接触者を早期発見・検査につなげ、感染拡大防止につなげることができる。ただし、その際には、感染者の情報が保護され人権が守られるよう配慮する必要がある。

 

 

 

別添資料2

 

ハイリスク者保護の「新しい生活様式」の提案

 

● 目標:「接触機会 5割 で命も暮らしも守る出口戦略」の中で、社会経済活動を再開し、医療体制も守る。特に、無症状・軽症者の陽性患者からハイリスク者を保護して、命が守られる状態を作り出す。

 

● CDC のガイドラインでは、65歳以上の者はハイリスク者としている。さらに、居住形態により対策が異なること考慮し、施設および在宅で生活されている方々とで場合分けして「新しい生活様式」の具体的イメージを付す必要がある。

【参考】COVID-19, Groups at Higher Risk for Severe Illness, CDC website

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/need-extra-precautions/groups-at-higher-risk.html

 

● ハイリスク者においても、COVID-19 陽性患者・濃厚接触者・それ以外の方を含め、「その人の尊厳を守りつつ、その人らしい社会生活を送ることができる」社会を目指すべきである。

● 一方で、感染後重篤化するリスクの高い高齢者を感染から守るような社会の仕組みが必要である。

● そこで、高齢者の自立や尊厳を守りつつ、感染リスクを下げるための新しい生活様式として以下を提案する。

 

(国全体としての方向性)

1) Physical distancing により行動制限が行われることで、フレイルや認知症等の問題の増大が懸念されるため、国や地方行政は確かな根拠をもって行動制限の提案・解除を柔軟に行うべきである。特に最近では都道府県単位でも基準が異なるため、確かな standard を早期に設けるべきである。
2) 上記を踏まえて社会生活の活動範囲の提案を行うが、人々の基本的人権を守る意味でも、法的枠組みで強制することは日本文化になじまないと考える。
3) そのため、あくまで国や地方自治体での提案は強制的なものでないものとする。
4) 新しい生活様式の実現に向けて、高齢者ケアに関わる医療従事者等の労働環境整備を徹底することが望ましい。

 

(高齢者の新しい生活様式:自宅で生活する方々)

(1)本人及び家族

5) 元気な高齢者でも市中で罹患するリスクがあるため、本人及び家族にスタンダードプリコーションをはじめとした教育機会を多方面から行う。

5) を踏まえて、ハイリスク者とローリスク者が同居している場合、以下の行動を守る。

・自宅日常生活用具(食器、タオル等)の区分け・部屋を分ける

・世話は限られた人で

・マスクをつける

・こまめに手を洗う

・換気をする

・リネンや衣服を洗濯する

・ゴミは密閉して捨てる

(厚労省;https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000601721.pdf

 

6) 5) を踏まえ、自身で積極的に情報収集できる(インターネット等から調べる)方々は、オンラインシステムを通じた教育機会や健康体操の配信等により健康の維持増進を推進する。

例)受信側(高齢者宅)にネット環境がなくても発信者側のオンライン端末と接続できるサービスの例 まごチャンネル with SECOM

 

7) 受診必要時は、高齢者のリスクを鑑み、できるだけ大人数が乗車する公共交通機関を用いない移動を行う。
8) 受診を含め、日常生活上必要な移動においては、タクシーやハイリスク者専用車両・専用ゾーン利用や、MaaS (モビリティ・アズ・ア・サービス)の考え方を活用し、効率的な移動を心がける。(公的財政支援は必ず行い、ハイリスク者負担とならないよう配慮する。)

 

(2)高齢者と同居する人々

9) 高齢者とのコミュニケーション時には、十分な距離を取るよう配慮する(会話や食事の時はできるだけ2メートル程度空けるなど)
10) 2世帯住宅等で直接会う機会が少ない場合は、電話やオンライン電話等を活用した交流を意識して行う。
11) 外部からの来訪者に対しては感染予防の十分な説明および対策を講ずる。
12) 風呂トイレなどは使用したら、ハイリスク者が使う前に洗うなどの対応が好ましい。

 

(3)一般の人々

13) 事情があって公共交通機関を利用する高齢者に配慮した話し方、距離の取り方を心がける(2メートルあけるなど)。電車等はハイリスク者専用車両・ゾーンなどの創設も良い。
14) 同居していない家族、親戚の高齢者とのコミュニケーションは、電話、オンライン電話等を活用した交流を意識して行う。
15) 不要な高齢者宅や施設への訪問は控える。

 

(4)国・地方自治体

16) 国側としては政府広告等のメディアを通じて確かな情報を伝えることで、必ずしも積極的に情報収集ができない方々への情報を届けることが重要である。
17) 上記ハイリスク者がタクシーを利用できるようタクシー券の経済的支援を行う。
18) 訪問診療、看護、介護従事者へ優先的にマスク、感染防御資材などの分配を継続する。
19) 本人ができうる限り外出できるよう、訪問介護・看護・リハビリの権利拡大し、買い物や散歩を可能にすることでフレイル予防を目指す。
20) オンライン電話を高齢者が活用できるようになるには、初期設定が大きな課題となる。故に、初期設定を公的支援し、使用方法を高齢者に伝える支援も行う。また、経済的支援を行う。
21) その他、Go to Travel キャンペーンを活用して、本人負担がない形で、地域内の旅館ホテルへの長期逗留なども推進する。

 

(5)訪問診療、看護、介護従事者

22) 訪問診療、訪問看護・介護従事者は、以下を参考に感染予防対策を徹底する。

・必要最小限の荷物のみを居室に持ち込む

・ケアの前と後に手洗いを行う。タオル(利用者ごとに用意)またはペーパータオルを持参する。

・マスクを正しくつけ、挨拶などの際にも外さない。

・布製エプロンを利用者ごとに交換するか使い捨てエプロンを使う。

・部屋の換気を行う。

・利用者の体温測定を行う。顔と顔が向き合わないように注意する。

23) 自宅の中で医療(訪問診療、訪問看護等)を必要とする方には、医療従事者からの持ち込みによる感染リスク回避、また、同居家族に感染疑い者がでた場合に訪問回数を減らす必要がある。適宜オンラインによる診療や健康相談を行う。
24) 上記実施の上で、訪問回数減少により社会的孤立が起きないよう、医療提供者側は対象者の状態に留意しながら医療を行う。

(高齢者の新しい生活様式:施設で生活する方々)

基本的な考え方

施設で生活をしなければならない方々は、自宅生活をされている方々より外出制限が求められる。そのため、前提に書いた感染リスクと権利擁護のバランスを重視しながら、以下のような生活様式を提案する。

 

(1)施設管理者、従事者

25) 家族等が入館するのではなく、人通りの少ない場所を一緒に散歩するなど感染リスクの低い方法で面会する。また、ICTを活用した面会方法を推進する。
26) 介護保険サービス以外の訪問事業者(訪問マッサージ、訪問理美容等)の入出館は、一定の基準を持って行う。
27) 宅配便業者の出入りはフロントまでとする。
28) 眼鏡や補聴器、銀行サービスは、ニーズがあった時のみ来館していただくが、標準的感染予防策に基づいた最小限の対面の機会とする。
29) 施設から在宅へ移行し、ショートステイの希望があった場合も利用は慎重に判断する。
30) 施設内レクリエーションは、感染リスクを考慮したうえで行う。特に、廃用症候群の予防のための運動は積極的に実施する。
31) 特に住宅型の有料老人ホームなどでは、自室でできる体操の資料を紹介する。
32) デイサービスで実施するプログラムでは、密にならない内容をベースに実施する。
33) 施設内での感染者および感染疑いが起きることを想定し、できるだけ施設ではなく在宅療養できる仕組みを推進する。

(2)本人及び家族

34) ICT を活用した面会方法ができるよう、調べたり教えあって準備を行う。
35) 手洗いやマスク使用、距離を保つなど実施の上、簡単な体操や散歩は意識して継続する。

以上

 

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