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2012-11-22

地域集権改革案

 改革案の結論を述べましょう。地方集権改革は、まず市町村及び広域連合の強化により地域住民のニーズを満たし、その上で、それらの地方自治体が行える事務に関しては、都道府県からのサンゲンの移譲を行います。一方で、都道府県を超えた行政レベルでの事務が必要な行政に関しては、既存または新設される都道府県連合へサンゲンの移譲を行い、その強化とともに州の設置が必要となります。都道府県の役割が自然となくなるのであれば、最終的には市町村・州・国家という三層構造に行きつくと思います。
まず、現在市町村が担っている業務は、消防・防災、窓口業務、対人社会サービス、社会扶助・衛生、地域計画などです。これは最も住民に近い市町村が最も生活に密着した事務を行うということが実現されている証拠です。現金給付ではなく、現物給付を強化することが市町村における急務の課題です。その具体的内容は、医療・介護、育児・教育などです。
今後の人口減少社会への対応として、医療・介護を充実させていくことはもちろんのこと、持続可能な社会にするためにも育児やこれからの日本を担う人材を育てるためにも教育を充実させていくことが必要であり、それらの高まる需要に対して社会的支出を増やしていくこと、つまりは地域住民のニーズを満たすために市町村の機能を強化していくことこそが、地域集権の第一の柱です。こうした生活に密着した課題を一番身近な政府で解決していくことこそが住民の生活基盤の安定につながる上、地域での雇用創出にも役立ちます。
各市町村が担えないような行政需要にはどう対応することが望ましいでしょうか。私は広域連合によってその解決を図るべきだと考えます。これは、市町村合併を促し「受け皿」を作るという発想とはまったく逆のアプローチです。例えば、広域的に廃棄物処理や市町村をまたがる都市計画を行いたい場合は近隣の市町村同士で広域連合を作り、身の回りの課題を出来るだけ自分達で解決するようにするのです。
その際、市町村の広域連合がその行政需要に答えられるように、独自の税財源を有することができるように制度を整えることが大切だと考えています。なぜなら、いくら市町村を超えた行政需要に応えようとしても、広域連合に独自財源がなければ身の回りの課題を自ら解決することは難しいですし、また結果としてニーズを満たせないか、上位の政府に頼らざるを得なくなるからです。これでは、地域集権は達成できません。もし、広域連合の住民が税金を納めてでも解決したい広域的な課題があるのであれば、それを阻止する理由はどこにもありません。
その結果、その結果として、多くの行政を広域連合が担うようになり、またその広域連合の住民が市町村合併をした方が効率的と判断した場合、その広域連合を新たな市町村として誕生させることもあり得ると考えています。本来、市町村合併とはこのようなステップを経るべきではないでしょうか。上から「受け皿」を作るように強制させられ、自分が住んでいる市町村がなくなるという「強制的市町村合併」ではなく、自ら進んで自分達地域住民が納得するような、つまり「住民自治」に基づく市町村合併こそが本来の形なのです。
では、都道府県と道州制の話はどうでしょうか。私の考え方は一貫して変わりません。ここでも、「住民自治」の観点から住民が納得して道州へと移行するように制度を整えていくことが大切だと思います。近年の道州制の議論はあまりにも急進的で、かつ「住民自治」という視点が抜け落ちているように感じます。出先機関廃止によって国から予算を奪うということに重点が置かれていたり、それによる二重行政の解決や投資効率の向上が第一目標であるかのように道州制を推進していたりするのです。
もちろん、それらの問題解決も大切だと思いますが、本当に大切なのは市町村やその広域連合、または都道府県では解決できない地域の問題を解決するための手段として、道州制の導入が検討されるべきなのです。その問題とは、もちろん医療・介護の地域の医療政策(特に医師の配置)の策定であったり、教育格差是正のための教育政策であったり、産業復興と積極的労働政策であったり、環境・インフラの整備なのです。それら地域の諸問題の解決を図るための地方行政改革なのです。
なんのための道州制なのか、ということが明確でないと住民の実感を伴わない制度改革にならざるを得なくなります。地域住民が生活の向上を実感できるような道州制への制度改革、これが地域集権改革の第二の柱となります。では、実際にどのような道州制の議論があるのかを見ながら、そしてそれらの問題点を指摘しながら、私の道州制論を提案していきたいと思います。
 財源論についても少しふれておきます。これからの地方政府の財源は消費税が一番有力です。社会保険中心の社会保障制度として再構築したならば、あまりにも所得にかかる負担が大きくなりすぎてしまいます。所得税(住民税も)の役割は税収というよりも格差の調整・労働所得と資本所得の間の調整に重きを置かざるを得ません。法人税を国税にするとともに、移行期間には市町村・広域連合・都道府県・州のそれぞれに財政需要に応じて消費税を割り振るとともに、財政調整機能も強化するべきです。

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